バーの数だけ出会いがありドラマがある。 ママさんのお店に対するこだわりや ちょっとしたプライベートを覗き見できる “一期一会”ならぬ、“一期イチGAY”
Spica 一期イチGAY アイキャッチ
新宿二丁目エリアのゲイバー

“野郎系兄貴バー”から、世代を越える店へ Spicaが重ねてきた二丁目の夜

新宿二丁目にあるゲイバー「Spica」。かつては野郎系・兄貴系を掲げ、現在は20代から70代まで幅広い世代が集まるお店です。初めて二丁目を歩いた石川ママが見たのは、靖国通りから続く道の先、仲通りだけに灯りが集まる景色でした。酒場を好きになった理由、ベテランマスターから教わった礼儀、スタッフと話し合いながら変えてきたお店、そして休日の推し活まで伺いました。

平日しっぽり 週末にぎやか 20代〜70代 一人でも入りやすい 太め〜ガチムチが集まる
Spica 石川さん
インタビュー協力 / Spica

【ママ】 石川さん

新宿二丁目の街並みやゲイバー文化の移り変わりを見てきた石川ママ。飲食店の経営経験を生かしてSpicaを始め、昔ながらの礼儀を大切にしながらも、若い世代が増えた現在のお店をスタッフ全員で話し合いながら作り続けています。

新宿二丁目のSpicaへ

新宿三丁目駅から新宿二丁目方面へ歩いて約4分。藤原ナインビルの1階にあるのが、今回お邪魔したSpicaです。入口が通りに面しているため、階段やエレベーターを使わず、そのまま扉まで向かえます。

外観と入口を確認して扉を開けると、奥へ長く伸びるカウンターが見えてきます。

一人でも、自分のペースで過ごせる店内

Spicaは、平日はしっぽりと落ち着いた会話を楽しみやすく、週末はよりにぎやかな空気になります。カラオケは曜日を問わず歌われていて、昭和歌謡から現在流行している曲まで、幅広い世代の歌が店内に響きます。

来店される客層:20代から70代まで。特に40代から50代が多く、太めからガチムチの方も比較的多く来店されています。

お店の雰囲気:平日はしっぽり、週末はよりにぎやか。カラオケは曜日を問わず楽しまれています。

入店ルール:ゲイ男性向けの店舗です。女性は入店できません。

ふらっと
石川さん、本日はよろしくお願いします。店内は長いカウンターが中心で、一人でも座りやすそうですね。
石川さん
うちは一人で来る方が多くて、「一匹狼の館」って言われるくらい(笑)。
ふらっと
「一匹狼の館」という言葉、かなり印象に残りますね。一人でも、自分のペースで過ごせる雰囲気なんですか?
石川さん
群れないお客さんが多いし、カップルで来る方もいるよ。無理に誰かの輪へ入らなくても、自分のペースで飲んでもらえたらいいかな。
ふらっと
平日はしっぽり、週末はにぎやか。カラオケは曜日を問わず楽しまれているんですね。
石川さん
平日も歌うよ。昭和歌謡から今の曲まで幅広いから、歌いたい日は気にせず楽しんでほしいかな。

Spicaという名前に重なる、二つの顔

店名の「Spica」は、乙女座を代表する星の名前です。石川ママ自身も乙女座で、その性格を「野郎系と乙女系、両方の顔がある」と表現します。

ふらっと
Spicaという店名は、星の名前から付けたんですか?
石川さん
Spicaは乙女座の星で、私も乙女座。そこから店名を付けたの。
ふらっと
石川さんにとって、乙女座らしさってどんなところなんでしょう?
石川さん
乙女座には二面性があると思っていて、野郎系と乙女系の両方を持ってる(笑)。
ふらっと
以前の野郎系・兄貴系というお店の顔と、星や音楽が好きな石川さんの一面が、店名の中でつながっているんですね。

野郎系と、乙女系。その両方を持つSpica

以前は野郎系・兄貴系のゲイバーとして知られていたSpica。一方で、星の名前や音楽を好む石川ママの乙女的な一面もあります。どちらか一方ではなく、その両方があることが、Spicaらしさにつながっています。

酒ではなく、酒場の雰囲気が好きだった

石川ママがお店を始めた背景には、酒場そのものへの愛着がありました。飲食店を複数経営していた経験があり、お酒をたくさん飲むことよりも、人が集まるバーの空気が好きだったそうです。

ふらっと
Spicaを始めようと思ったきっかけは、どんなことだったんですか?
石川さん
酒場の雰囲気が好きだったからね。飲食店を複数やっていたこともあるし、バーには週6くらいで通っていたかな。
ふらっと
週6で通っていても、お酒をたくさん飲むことが目的ではなかったんですね。
石川さん
私はそんなに飲まないよ。昔は飲めないマスターも多くて、飲めない人にも優しい店が多かった。
ふらっと
飲める量より、その場所で会話を楽しめることの方が大切だったんですね。
石川さん
お酒そのものより、人が集まる酒場の空気が好きだったんだと思う。

たくさん飲めることと、酒場を楽しめることは同じではありません。石川ママが覚えている昔のゲイバーには、お酒を飲めない人も含めて、その場の会話や空気を楽しめる文化がありました。

道の先で出会った、“天国の入り口”

石川ママが初めて新宿二丁目を訪れたきっかけは、本屋で見つけたゲイ雑誌でした。そこに載っていた情報を頼りに街を歩くと、現在とは異なる二丁目の景色が広がっていたそうです。

ふらっと
初めて新宿二丁目へ来た時は、どんなきっかけだったんですか?
石川さん
本屋でゲイ雑誌を見つけて、「こんな街の外れにあるんだ」って興味を持って歩いてみたの。
ふらっと
雑誌を頼りに、実際に新宿三丁目から二丁目まで歩いてきたんですね。
石川さん
当時は靖国通りから二丁目までの道が暗くて、歩いてくるだけでも勇気が必要だったね。
ふらっと
その道を抜けて仲通りへ入った瞬間、景色が変わったんですか?
石川さん
仲通りだけ灯りがついていて、天国の入り口みたいだった。そこだけ別の世界に見えたよ。
ふらっと
きれいな景色だけではなく、人に見られないように入る緊張もあったんですよね。
石川さん
人に見られないようにサッと店へ入って、20時になるとこそこそ移動する人も本当に多かった。

現在の明るくにぎわう街からは想像しづらい景色ですが、道の先で出会った仲通りの灯りは、石川ママにとって新しい世界へ踏み出す入口になりました。

道の先で、仲通りだけに灯りが集まっていた。そこは、天国の入り口のように見えた。

ベテランマスターから教わった二丁目の礼儀

Spicaを始めた頃、石川ママは先輩であるベテランマスターたちから、店を続けるためのさまざまなことを教わりました。

ふらっと
お店を始めた時は、大変だったことも多かったですか?
石川さん
大変というより、勉強になったことが多かったかな。当時はベテランマスターから、店を続けるためのことをいろいろ教わった。
ふらっと
お酒の出し方だけではなく、二丁目の中で店を続けるための礼儀も含まれていたんですか?
石川さん
二丁目には、しきたりや礼儀があったんですよ。それを教わったから、今も店を続けられているんだと思う。
ふらっと
昔から大切にしてきたことでも、今の若い世代には、今に合う伝え方が必要ですよね。
石川さん
昔と今では受け取り方も違うから、同じ言い方では伝わらないこともある。大事な部分は残しながら、伝え方は変えていかないとね。

昔の厳しさをそのまま正解にするのではなく、店を続けるために必要だった礼儀や知恵を、現在の方法でどう残していくか。石川ママの話からは、時代が変わったからこその難しさも見えてきました。

野郎系兄貴バーから、若い世代も集まる店へ

Spicaは、以前から現在と同じ客層だったわけではありません。昔は新宿二丁目でも珍しい、野郎系・兄貴系のゲイバーとして、40代以上のお客さんを中心にしていたそうです。

以前のSpica

野郎系・兄貴系のゲイバー

新宿二丁目でも珍しいコンセプトで、40代以上のお客さんを中心にしていました。

現在のSpica

20代から70代まで集まる店

若い世代も増え、太めからガチムチの方を中心に、幅広い年代がカウンターを囲みます。

ふらっと
今のSpicaは幅広い世代が来られていますが、以前はもっとコンセプトがはっきりしていたんですか?
石川さん
昔は野郎系の兄貴バーで、新宿では珍しい店だった。40代以上の方をメインにしてたかな。
ふらっと
その頃の個性を残しながら、今は20代の方まで来るようになったんですね。
石川さん
今は若い子も増えて、来る年代もずいぶん広がったよ。時代と一緒に店の雰囲気も変わってきたね。
ふらっと
年代が広がれば、昔と同じやり方だけでは合わない場面も増えそうです。
石川さん
今はスタッフとも相談しながら決めてる。お客さんが変われば、お店側も考えていかないとね。

昔の形を捨てたというより、長く店を続ける中で、集まる人や夜の過ごし方に合わせて変化してきた。Spicaの現在は、その時間の積み重ねの上にあります。

スタッフみんなで話し合い、店を変えていく

長く店を続けてきた石川ママですが、経験だけを根拠にすべてを一人で決めるわけではありません。現在のSpicaを作る上で大切にしているのは、スタッフ同士で言葉にすることです。

ふらっと
石川さんほど経験があると、ママ一人で判断する場面も多そうですが、実際はどうですか?
石川さん
私一人で全部決めるんじゃなくて、スタッフみんなで話し合って決めるようにしてる。
ふらっと
問題が大きくなってからではなく、違和感が小さいうちに話すようなイメージでしょうか。
石川さん
お客さんの不満や我慢が大きくなる前に、できるだけ早く気づいて解決したいんだよね。
ふらっと
若い世代が増えた今は、昔の感覚だけでは決めないことも大切なんですね。
石川さん
客層も変わってきたから、昔の感覚だけで決めずに、みんなで相談するようにしてるよ。
長く続けてきた経験を押しつけるのではなく、今いるスタッフとお客さんの声を聞きながら、Spicaの形を更新していく。

壁紙を4回張り替えた、今だから笑える話

長く店を続けていると、きれいな思い出だけでは終わりません。昔は店内でどんちゃん騒ぎをする夜もあり、椅子を倒した拍子に壁へ穴が開くこともあったそうです。

店の玄関付近では、立ち小便や嘔吐に悩まされた時期もあり、石川ママはその都度注意しながら店を守ってきました。

ふらっと
ここまで店を続けてきた中で、今なら笑って話せる出来事はありますか?
石川さん
昔は店でどんちゃん騒ぎをして、椅子を倒した拍子に壁へ穴が開くこともあったよ。直したと思ったら、また別の穴が開いたりしてね(笑)。
ふらっと
一度直して終わりではなく、何度も張り替えることになったんですか?
石川さん
壁紙は20年で4回張り替えてる。なかなか多い方でしょ(笑)。
ふらっと
笑って話してくれていますが、そのたびにお店を元へ戻してきたんですよね。今の壁は大丈夫ですか?
石川さん
今は穴もなくて、きれいになってるよ(笑)。

冗談交じりに聞かせてくれましたが、壁紙を張り替えるたびに、Spicaを整え直してきた時間があります。「今はきれいになった」という一言にも、店を守ってきた年月がにじんでいました。

毎月9日の「スピカの日」

コロナ禍以前、Spicaでは毎月9日を「スピカの日」として、さまざまなイベントを行っていました。

ふらっと
毎月9日の「スピカの日」は、店内だけでなく、外へ出かけることもあったんですか?
石川さん
昔は、食べ放題や歌い放題をやったり、お客さんと花見やボウリング、ビアガーデンへ出かけたりしてたよ。
ふらっと
店内のイベントだけではなく、お客さんと一緒に外へ出かける楽しみもあったんですね。

一人でふらっと飲める店でありながら、お客さんと店の外へ出かける機会もありました。参加したい時には一緒に楽しめる、その距離感もSpicaが作ってきた時間の一つです。

休日は、音楽と推し活の時間

新宿二丁目や店の歴史を語る石川ママですが、休日の話になると、また違う一面が見えてきました。

Spica 石川さん
ふらっと
お休みの日は、どんなふうに過ごしているんですか?
石川さん
推し活かな。作詞家や作曲家の方々とも交流があって、その延長で音楽にはずっと身近に触れてきたよ。
ふらっと
作詞家や作曲家の方々との交流が、今の推し活にもつながっているんですね。
石川さん
その延長で、今も音楽を聴いたり、推しを追いかけたりしてる。
ふらっと
Spicaで昭和歌謡から今の曲まで歌われていることにも、石川さんの音楽好きがつながっている気がします。

Spicaという星の名前、曜日を問わず楽しめるカラオケ、そして石川ママが作詞家や作曲家の方々と重ねてきた交流。店を離れた時間にも、音楽は自然につながっていました。

一人でも、気軽に扉を開けてほしい

人目を避けるように店へ入る方が多かった時代から、街が明るくなり、若い世代も訪れる現在まで。石川ママは、新宿二丁目とSpicaの変化を見てきました。

その石川ママが、サイトを見ている方へ伝えたいのは、とてもシンプルな一言です。

ふらっと
最後に、初めてSpicaへ行こうか迷っている方へメッセージをお願いします。
石川さん
一人で気軽に来られる店なので、ぜひともお越しください。
ふらっと
「一匹狼の館」という言葉も、一人でいていいと思える安心感につながっていますね。

誰かと群れなければならないわけではなく、一人のままカウンターへ座ってもいい。平日はしっぽり、週末はにぎやかに。曜日を問わずカラオケを楽しむこともできる。Spicaは、その日の気分に合わせて過ごせるお店です。

ふらっと視点で見たSpica

本日のゲイバーはこんなところでした

Spicaは、20代から70代まで幅広い世代が集まり、平日はしっぽり、週末はよりにぎやかになるゲイバーです。カラオケは曜日を問わず楽しまれていて、昭和歌謡から現在の曲まで、さまざまな世代の歌が聞こえてきます。

現在の姿の背景には、野郎系・兄貴系バーとして40代以上のお客さんを中心にしていた時代と、仲通りの灯りに惹かれて初めて新宿二丁目へ足を踏み入れた石川ママの記憶があります。

印象的だったのは、石川ママが昔の形をそのまま守ろうとしているのではなく、若いお客さんやスタッフの声を聞きながら、お店を変え続けていることでした。昔の礼儀を知っているからこそ、今の時代に合う伝え方を考えているのだと思います。

壁紙を何度も張り替えた話を笑いに変え、休日には推し活を楽しむ。歴史を語る重さと、場を軽くする冗談の両方を持っているところにも、石川ママらしさがありました。

一匹狼のままでも、自分のペースでカウンターへ座れるSpica。仲通りの灯りに惹かれた石川ママが重ねてきた時間は、現在のお店にも自然に息づいています。

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