
聞くことを大切にする、Ryu-shiママ。新宿二丁目「Paradise Cafe」
「聞き上手になれるように、と思って」
新宿二丁目「Paradise Cafe」で、お客さんの話を聞くことを大切にしているママのRyu-shi(りゅうし)さん。長く通ってきたこの店を引き継いだのは、「なくしたくなかった」という思いからでした。
お店への愛着や、その日の気分に合わせた接客。さらに話を聞いていくと、昔はクラブのステージに立っていたという一面も。ジャズの流れるカウンターで、今夜はママの話を聞かせてもらいます。

インタビュー協力/Paradise Cafe
Ryu-shi(りゅうし)さん
一人で飲みたい日も、話したい日も。その日の気分を感じ取りながら、お客さんの話に耳を傾けるママ。
新宿二丁目「Paradise Cafe」へ



新宿三丁目駅から歩いて約4分。青い「Paradise Cafe」の看板を目印に、紫色の外階段を上がって3階へ。木の扉には、魚の形をした店名プレートが掛かっています。
お店の雰囲気
店内には、木のカウンターと壁沿いのテーブル席。ジャズが流れるなか、ママと話していると、こちらの話もゆっくり聞いてもらえそうな印象を受けます。




来店される客層:30代〜60代。40代〜60代の方が多め。
店内の雰囲気:平日はしっぽり・のんびり、週末ものんびり。
一人での来店:一人と複数人は半々くらい。
取材の途中、お客さんの話を聞くことについて伺っていると、こんなやり取りがありました。

普段は聞く側だと、こんなふうに質問されることって、あまりないんじゃないですか?

うまく答えられないですね、質問されると。

すみません、いきなり来て、いきなり質問ばかりして(笑)。
それでも、お店のこと、昔のこと、休日のことと、話を聞かせてくれたママ。まずは、この店を引き継ぐことになった経緯から。
長く通った店を、なくしたくなかった

お店を引き継ぐことになったのは、どういうきっかけだったんですか?

先代ママが東京を離れることになって、お店を閉めるっておっしゃったんです。自分も思い入れがあるし、なくしたくなかったので。

もともとは、お客さんとして来られていたんですよね。

最初はお客さんでした。そのあと、半年ぐらいお店に入っていたことがあって。パーティーのときに手伝ったりもしていましたね。
お客さんとして通い、スタッフとして立ち、イベントを手伝うこともあった場所。ママとこの店との付き合いは、引き継ぐことが決まるより、ずっと前から続いています。

お店を閉めると聞いて、すぐに「自分が引き継ぎたい」と言えたんですか?

最初は、ほかにこの場所を使いたいとか、名前も引き継いでやりたいという方がいる、という話も聞いていたので、自分は見守っていたんです。
そのあと、本当にお店をやめるという話になったので、「自分がお店を引き継いでもいいですか」と提案しました。「やりたいんだったら、やってみる?」ということで、引き継がせてもらった感じですね。
引き継ぐ前から、棚を塗って、床を張り替えて
店への思い入れが伝わってきたのは、コロナ禍の話でした。

コロナ禍にお店の手入れをされていたのは、引き継ぐよりも前の話ですよね。

そうですね。お店が閉まっていたときに、自分で何かできないかなと思って。棚を塗装したり、床を全部変えたり、そういうことをしていたんです。

その頃には、もう引き継ぐお話があったんですか?

そのときは、全然そういう話はなかったです。自分一人で何かできないかな、ということでやっていたので。そういう意味でも、思い入れはありましたね。
棚や床の手入れをしていた頃には、まだ自分がこの店を引き継ぐとは決まっていなかった。それでも、何かできることを探して手を動かしていたという話に、この場所との関わりの深さを感じました。
エアコンを買った、そのあとが大変

実際に引き継ぐとき、大変だったことはありましたか?

壁紙とエアコンを変えたんですけど、エアコンを購入したのに、取り付けができないということがあって。
量販店で買って見に来てもらったら、ビルとビルの間に足場を組まないと付けられないとか、配管の部分が古くて対応できないとか。取り付けにお金がかかってしまいましたね。

それは大変ですね。内装のことに加えて、引き継いだあとの、お客さんとの関わりはどうでしたか?

先代ママと話したくて、先代ママを目当てに来ていたお客さんも多かったので。そういう方に、また来てもらうのは難しいかな、というのはありました。
長く親しまれてきた店だからこそ、先代ママに会うために通っていた人もいる。引き継いだりゅうしさんは、そこでどんな接客を大切にしてきたのでしょうか。
先代ママは毒舌。りゅうしさんは?

先代ママの頃も、今のように、ゆったりした雰囲気のお店だったんですか?

ジャズが流れていて、そんなに騒がしくならないようにしていましたね。ただ、先代ママは毒舌だったので。その毒を聞きに来るお客さんも多かったです。

りゅうしさんは、そういうところもあるんですか?

いや、毒はあんまりないので。
同じ店に立っていても、話し方も、持ち味も違います。りゅうしさんが最初に考えたのは、お客さんの話をどう聞くか、ということでした。

お店を引き継いで、どんなことを大切にしようと思ったんですか?

自分は面白い話が得意、というわけでもないので。基本的には、お客さんの話を上手に聞けるように、聞き上手になれるように頑張りたいな、というのが最初にありました。
同じお客さんでも、その日の気分は違うから

同じお客さんでも、来る日によって雰囲気が違うことってあると思うんです。今日は一人でゆっくりしたいとか、話を聞いてほしいとか。そういうところも気にされていますか?

気にしますね。一人でゆっくり飲みたい気分なのか、それともお話ししたいのか、話を聞いてもらいたいのか、愚痴を聞いてもらいたいのか。どういう気分なのかを感じ取れるように、努力はしています。

その場にいるお客さん同士でも、盛り上がり方が違うときはありますよね。そういうときは、どうされるんですか?

まずは様子を見ますね。先に飲んでいる方がいて、もう出来上がって来られた方がいたとして、周りの方も一緒に盛り上がりたい感じなら、そちらに合わせます。
ちょっと迷惑そうな感じだったら、「ゆっくり飲みましょう」というふうに、お伝えするかな。
ゆっくり話せる店の雰囲気にも、その場を見ているママの気配りがあるようです。同じお客さんだからと、いつも同じ調子で接するわけではない。その日の気分を感じ取ろうとする姿勢が、印象に残りました。
ジャズからカラオケへ

カラオケは、どんなタイミングで使うことが多いんですか?

基本的には、あまり使っていないですね。ほかのお客さんがいらっしゃらないときに練習される方がいたり、少し遅い時間に一緒に歌ったり。その場のお客さん同士で、歌いたいねという話になって歌うこともあります。

カラオケを始めると、会話のしやすさや、場の雰囲気も変わりますよね。

そうですね。ジャズからカラオケって、結構ハードルが高いので、なかなか歌おうという気にならないのかもしれないですけど。お客さんから「歌いたい」というのは、そこまで多くないですね。
カラオケも、その日に居合わせた人たちの気分に合わせて。普段はジャズを聴きながら、会話とお酒を楽しむ時間が流れています。
ママも気になる、店名の由来

「Paradise Cafe」という名前の由来は、聞いたことがありますか?

直接そうだと公言していたわけではないんですけど、先代ママが中島みゆきさんをすごく好きだったので。曲のタイトルから取ったんだろうな、とは思っています。
先代ママから、由来をはっきり聞いたというわけではないそう。それでも、店の名前や内装から、音楽の話が生まれることがあるといいます。

お客さんから「このランプも、ジャケットのランプと一緒なんでしょ?」と言われたこともあって。自分は、それは知らなかったです。本当にそうなのかは分からないんですけど、そういう話もされますね。

ランプにも、そんなお話があるんですね。
長く通うお客さんから教わる、店の話。ママが知っていることもあれば、引き継いだあとに初めて聞くこともあるようです。
ゆっくり飲む夜も、遊ぶ夜も

初めて飲みに行ったゲイバーも、こちらだったんですか?

初めて飲みに行った店は、ここではなかったですね。その前にクラブにも行っていたので、その流れで、飲み屋さんにも行ってみたいね、という話になって。行きやすいお店を人に聞いて、友達と一緒に行ったような気がします。

その後、こちらにも通うようになったんですね。

別のお店に通っていて、そことここのお客さんが、行ったり来たりすることもあったので。基本的にはそちらに行きつつ、たまにここにも来ていました。
そちらはカラオケでワイワイする店だったので、こっちではゆっくり飲む、みたいな感じでしたね。
今の穏やかな接客からは、ゆったり飲む姿が浮かぶママですが、若い頃は、クラブにもよく遊びに行っていたそうです。

今は、ご自分が前に出るというより、お話を聞くイメージがあります。

今は、そんなに前に出る感じではないですね。昔はクラブが好きだったのもあって、ステージに立ったりしていたこともあったんですけど。

そうなんですか。それは意外でした。

クラブに行くときと、お店にいるときでは、キャラクターが違うかもしれないですね。
にぎやかな店で飲む夜も、クラブへ出かける夜も、ここでゆっくり飲む夜もあった。お客さんだった頃に過ごしてきた時間も、今のママにつながっているように感じます。
休日は、家でドラマやアニメを

お休みの日は、どんなふうに過ごしていますか?

家でのんびりですね。ドラマを見たり、映画を見たり。

最近、ハマっているアニメやドラマ、映画はありますか?

ハマっているというか、アニメは、そのシーズンが始まると結構ひと通り見る、という感じですね。

ホラー系も見たりするんですか?

見たりもしますけど、そこまでは見ないかな。
そのシーズンのアニメをひと通り見るというママ。好きな作品の話を持っていけば、お店での会話も、また違う方向へ広がりそうです。
いつでも、顔なじみがいる店へ

今は、普段お一人で営業されているんですか?

今は一人でやっています。前はスタッフもいたんですけど、仕事の関係で少しずつ辞める方がいて。いなくなったタイミングで、一人でやってみようかなと思って。

週末も一人なんですか?

週末も一人ですね。
カウンターに立つママと話す人もいれば、一緒に来た人と過ごす人もいます。一人で来る方と、複数人で来る方は半々くらい。一人で訪れ、そこから常連になっていく方もいるそうです。

これから、どんなお店にしていきたいですか?

いろいろなお客さんに来てもらって、そこからお客さん同士のつながりができたら。いつ行っても知っている人がいる、というようなお店づくりができたらな、とは思っています。
一人でふらっと立ち寄った先で、ママと話し、顔見知りが少しずつ増えていく。ママが思い描くのは、そんなつながりのある店です。

基本的に、一人でいらっしゃっても、気軽に飲めると思うので。
ふらっと視点で見たParadise Cafe

取材で心に残ったのは、「なくしたくなかった」という言葉と、引き継ぐ前から店の手入れをしていたという話でした。
長く通ってきた店で、今度は自分がお客さんを迎える。そのときにママが大切にしているのは、相手が今日、どんな気分でここに来たのかを感じ取ろうとすること。
おしゃべりを楽しみたい日にも、少しゆっくり飲みたい日にも、こうして様子を見てくれる人がいると、過ごしやすいと感じるのではないでしょうか。
ジャズの流れるカウンターで、話を聞いてもらいながら、ときにはママの昔話や好きな作品の話も。そんな一杯を楽しみに、訪れてみてはいかがでしょうか。
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