パートナーと養子縁組すると、ふたりの関係はどう変わる?
養子縁組をすると、ふたりは法律上の「養親(親の立場)」と「養子(子の立場)」になります。相続人の立場だけでなく、氏・戸籍、扶養、親族との関係も変わります。
ここでは、日本で成人同士が行う普通養子縁組について、制度の基本と、会社や家族への伝え方も含めてふたりで考えておきたいことを整理します。
情報確認:
養子縁組で変わること
| 項目 | 変わること | それだけでは変わらないこと |
|---|---|---|
| 法律上の立場 | 法律上の親子になる。 | 配偶者になるわけではない。 |
| 相続 | 子・親として相続に関わる。 | 相続人になっても、全財産を受け取れるとは限らない。 |
| 氏・戸籍 | 原則、養親の氏を名乗り、その戸籍に入る。 | 必ずふたりだけの戸籍になるとは限らない。 |
| 扶養・親族 | 扶養義務が生じ、親族関係も広がる。 | 実親との親子関係は残る。 |
| 税・制度・保険 | 親族としての関係が、利用条件に関わる場合がある。 | 利用できるかは、各制度・契約の条件による。 |
| 離縁 | 手続きで、縁組による親族関係が終了する。 | 氏・戸籍の確認が必要。現在の法律では婚姻の制限も残る。 |
養子縁組は、婚姻やパートナーシップ制度とは別の制度です。日々の関係は対等なパートナーでも、法律上は「親」「子」になることを、ふたりで理解しておきましょう。
成人同士の主な要件と届出
- 養親になる人は20歳以上。自分より年上の人や、自分の父母・祖父母などを養子にはできません。
- ふたりに、法律上の養親・養子になる意思が必要です。どちらかに法律上の配偶者がいる場合は、原則としてその配偶者の同意も必要です。
- 市区町村に養子縁組届を提出します。自分たちの場合の条件や必要書類は、自治体の戸籍窓口で確認できます。
相続はどう変わる?
どちらが先に亡くなるかで、相続人になる条件が異なります。養親と養子の立場を、両方向から確認しましょう。
| 先に亡くなる人 | 相続人になる関係 |
|---|---|
| 養親 | 養子は法律上の子として相続人になります。他の子や法律上の配偶者がいれば、その人たちも相続に関わります。 |
| 養子 | 養親は親として相続人になる場合があります。養子に子や、子に代わって相続する孫などがいる場合は、その人たちが優先されます。 |
普通養子縁組では、養子と実親の親子関係や相続関係も続きます。
相続人になっても、全財産を受け取れるとは限りません。ほかの相続人や遺言の有無が関わり、相続には借金なども含まれます。財産を残す備えを考えるときは、ふたりそれぞれの家族関係も整理しておきましょう。
氏・戸籍と会社への届出
養子は、原則として養親の氏(名字)を名乗り、養親の戸籍に入ります。ただし、婚姻状況などによって扱いが異なり、必ずふたりだけの戸籍になるわけではありません。
会社では何を届け出る?
氏の変更や、扶養・福利厚生の申請に伴い、勤務先で届出や登録変更が必要になる場合があります。人事・総務に、変更する項目、提出書類、記載する続柄を確認しましょう。税・社会保険の手続きも、申請内容などによって異なります。
仕事で以前の氏を使いたい場合は、名刺・メール・社内名簿などで使えるかも確認できます。本人確認書類、銀行、保険などの名義変更は、戸籍の届出とは別に確認が必要です。
理由を聞かれたら?
「なぜ養子縁組なのか」と聞かれたときは、その説明がどの手続きに必要なのかを確認できます。必要な届出と、交際やセクシュアリティを周囲へ話すことは、分けて考えたい点です。
たとえば「必要な届出と書類を教えてください。理由の説明は、どの手続きのために必要でしょうか。情報を共有する担当者の範囲も教えていただけますか」と尋ねる方法があります。
誰にどこまで伝わる?
戸籍などの提出書類から、縁組の事実や親子関係が担当者に伝わる場合があります。提出前に、書類を見る担当者と共有先を確認し、ふたりの関係についての情報は、必要な担当者の範囲で扱ってほしい旨を伝えられます。
本人の了解なく性的指向などを他の人に伝える「アウティング」は、職場のハラスメントに当たる場合があります。情報の扱いが気になるときは、社内の相談窓口などへ相談できます。
家族に関係を伝えていない場合は、氏の変化をどう説明するかも話し合っておきましょう。親族が戸籍の証明書を取得できる条件は、戸籍窓口で確認できます。
自分が説明することで、相手の交際やセクシュアリティに関する情報も伝わることがあります。誰に、いつ、どこまで話すかは、ふたりそれぞれの希望を確かめましょう。
扶養と親族の関係は?
養親と養子には、互いの生活を支える扶養義務が生じます。実際にどの程度の支援が必要かは、双方の収入や生活状況などによって変わります。
養子と、養親の父母・きょうだいなどとの間にも法律上の親族関係が生じます。普通養子縁組では実親との親子関係も続くため、ふたりの間だけでなく、家族との関係も考えておきたいところです。
養子縁組だけで、相手の医療上の同意や財産管理などを、すべて代わりに行えるようになるわけではありません。
離縁で変わること、残ること
交際や同居を終えても、養子縁組は自動的には解消されません。法律上の親子関係を終了するには、離縁の手続きが必要です。
離縁の手続き
- 双方が合意する場合:話し合いによる協議離縁ができ、養子離縁届を市区町村へ届け出ます。
- 合意できない場合:家庭裁判所の調停を利用する方法があります。
- 相手が亡くなった後:生きている側が死後離縁をするには、家庭裁判所の許可が必要です。
氏・戸籍・契約も確認する
離縁で、その縁組による親族関係は終了し、養子の氏は原則として縁組前に戻ります。現在の氏を使い続けたい場合の条件や、戸籍の変化は、手続き前に戸籍窓口で確認しましょう。
ふたりの関係が変わるときは、遺言、保険の受取人、氏名を登録している契約なども見直しておきたい項目です。
離縁後も残る婚姻制限
現在の法律では、養親と養子だった当事者同士は、離縁後も婚姻できません。将来、婚姻に関する法律が変わる場合の扱いは、今の時点では分かりません。
決める前にふたりで確認すること
ふたりで話すこと
気持ちと、これからの希望
- 法律上の養親・養子になることや、書類にその関係に基づく続柄を記載することを、ふたりとも理解し、納得できるか。
- 会社や家族に伝える範囲と、相手の交際・セクシュアリティに関する情報の扱いを話せているか。
- 将来、ふたりの関係や生活が変わったとき、どうしたいかを話せているか。
事実を確認すること
法律と手続きの条件
- 双方の年齢、法律上の配偶者の有無、現在の氏・戸籍と、届出の条件。
- 双方の家族、財産・借金、遺言などの備えと、どちらが先に亡くなるかによる違い。
- 氏名を登録している契約、勤務先への届出、利用したい制度の条件と、提出書類・情報の共有先。
利用したい制度の条件を確かめる
税、年金、健康保険、勤務先の制度、保険契約には、それぞれ利用条件があります。養子縁組だけで一律に決まるものではないため、使いたい制度の窓口で条件と手続きを確認しましょう。
相談内容に合わせて窓口を選ぶ
自分たちの場合を確かめたいときは、気になる点に合う窓口へ相談できます。
- 自治体の戸籍窓口
- 届出の条件・必要書類、氏や戸籍の変化、証明書の扱い。
- 家族法・相続の弁護士
- 自分たちの家族関係を踏まえた相続や扶養、離縁について。
- 税理士・税務署
- 財産を渡す・受け取る際の税金や、税の制度について。
- 各制度・契約の窓口
- 年金事務所、健康保険の保険者、勤務先、保険会社などで、利用条件や手続きについて。勤務先では、書類の提出先や情報の共有範囲も。
相談前に「縁組後の氏・戸籍」「相続」「会社への届出と情報の共有先」など、確かめたい点とふたりの希望をメモしておくと話しやすくなります。必要な資料は、相談先へ事前に確認できます。
