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かつて街にあったゲイバー。
交わされた会話や、重ねられた時間。
お店の歩みと、そこで過ごした人たちの思い出を、
言葉と写真でプレイバック。
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上野「ひで」歌と会話の日々
上野しょんべん横丁で、約20年にわたり人を迎えてきたゲイバー「ひで」。店に足を運び、ママやお客さんと直接言葉を交わす。歌やおしゃべりを楽しむ。そこには、いつもの顔ぶれがいて、いつもの時間が流れていました。そんな日々を支えてきたヒデさんに、お店の始まりと、お客さんやスタッフへの思いを伺いました。訪問時の店内の様子とともに、「ひで」の記憶を残します。

上野「ひで」 店主
ヒデさん
やさしく穏やかな人柄で、笑顔を見るとこちらも自然と笑顔になるヒデさん。実は、元J衛官という経歴の持ち主でもあります。お客さんの話に耳を傾ける姿にも、親しみやすさと、さりげない心配りを感じるママです。
「ひで」はまで営業しています。取材は営業期間中に行いました。
読みたいお話へ(目次)
上野駅から、「ひで」へ
JR上野駅の浅草口から北へ約3分。細い路地にある「上野しょんべん横丁」の建物2階に、「ひで」はありました。
上野のしょんべん横丁とは?




上野駅近くの「上野七丁目横丁」は、「しょんべん横丁」とも呼ばれ、ゲイバーが集まってきた一角です。「ひで」も、その細い路地に店を構えた一軒でした。
店内の雰囲気



訪問時は、カウンターで隣同士のおしゃべりが続き、テーブル席にも別の話の輪がありました。カラオケもにぎわい、昭和歌謡から最近の曲まで幅広く、特に1980年代以降の曲が多かった印象です。「北ウイング」「め組のひと」「青春のたまり場」などが流れると拍手が起こり、そのそばで会話も続いていました。60代前後の方が中心に見えましたが、その年齢帯の空気感や、落ち着いた時間を好む30代後半〜50代前半の方も多く集まっていました。体型もさまざま。にぎやかさの中にもゆったりした時間があり、僕には老舗のカフェのような落ち着きも感じられました。
そんな店内で長く人を迎えてきたヒデさんに、ここから「ひで」の歩みを伺います。
01客席から、カウンターの内側へ

きょーすけ
「ひで」を始める前から、ゲイバーにはよく通われていたんですか?

ヒデさん
若い頃から、新宿二丁目へ通っていました。週末は二丁目のお店で過ごすことが多かったですね。
挨拶の仕方や、年上の方への接し方など、周りの方に教えていただいた覚えがあります。個性のあるマスターやお客さんがいて、可愛がっていただきました。
そういう方たちと過ごした、面白い時間でしたね。

きょーすけ
その後、ご自身でもゲイバーを仕事にしようと思われたのは、どうしてですか?

ヒデさん
自分に一番合っているかな、と思って。長く、この世界に親しんできましたからね。

きょーすけ
働く側になって、印象に残っていることはありますか?

ヒデさん
「ひで」を始める前に、近くのお店で5年ほど働きました。カウンターの中からお客さんを見ると、客として通っていたときとは、見える世界が違いました。
お客さんが何を楽しみに来てくださるのかを考えながら接する。その中で、自分がお店を持ったらどうお迎えしたいかを考えていったんです。
開店の日から続くご縁

きょーすけ
ヒデさんとスタッフのノブさんは、お二人とも元J衛官なんですね。ノブさんも、開店当初から一緒に働かれていたんですか?

ヒデさん
ノブさんは以前からの知り合いで、開店の日に来てくださったとき、手伝いをお願いしたんです。
それ以来、一緒に働いています。気心が知れていて、助かっています。
お店を始めた後も、お客さんから接客や営業について教わることがあったそうです。ヒデさんは、その言葉を自分のことを思ってくれたものとして振り返っていました。
02「ひで」で大切にしてきたこと

きょーすけ
お店を続けるうえで、ヒデさんが大切にしてきたことを聞かせていただけますか?

ヒデさん
お客さんに楽しんでいただける場をつくりたかったんです。
同じ方でも、その日の気持ちは違いますよね。うれしいことがあっていらした日は一緒に喜ぶ。元気のない日には、その日の様子に合わせてお話しする。そういうことを大切にしてきました。

きょーすけ
初めていらした方を迎えるときも、その思いは同じですか?

ヒデさん
初対面でも壁をつくらず、和んでいただきたいんです。冗談も交えながらお話ししています。
温泉の話、食事の話

きょーすけ
お客さんとの会話では、どんな話題が出てくるんですか?

ヒデさん
温泉旅行の帰りにお土産をくださった方とは、温泉のお話。食べることが好きな方なら、食事の話をしたり、お店の情報をお伝えしたりします。
お話を伺い、その方の好きなことや関心のあることを大切に、会話を広げています。
お隣と話すきっかけ

きょーすけ
初めて伺ったとき、ヒデさんやスタッフのカズさんたちがお隣のお客さんに僕を紹介してくださいました。おかげで、自然にお話しできました。

ヒデさん
お客さん同士がお話しするきっかけになればと思っています。お店で過ごした時間を楽しかったと感じて、喜びや楽しさを持って帰っていただきたいんです。
お話の中では、目の前の方だけでなく、同じ店内にいるほかのお客さんへの配慮も大切にしていると伺いました。
ボトルを入れたときには、氷や割りものがそれぞれに用意されていました。そこにも、お店の気遣いを感じました。
六尺姿でのおもてなし

きょーすけ
「ひで」の六尺(ふんどし)姿でのおもてなしは、どんなきっかけで始まったんですか?

ヒデさん
以前のお店で六尺姿で接客していたのが始まりです。それをお客さんが喜んでくださったので、自分の店でも続けました。
お客さんに六尺姿になっていただくのではなく、私たちスタッフの装いです。普段とは少し違う、華やかな雰囲気も楽しんでいただきたかったんです。
時代の変化とともに

きょーすけ
長くお店に立ってこられる中で、時代の変化はどう感じていらっしゃいますか?

ヒデさん
自分が育ってきた頃と今とでは、街も暮らしも、ずいぶん変わりました。その時代に合わせていくことは必要だと思います。
その中でも、人を思いやる気持ちは、自分自身も大切にしていきたいです。
皆さんにも、周りの人の気持ちを考えながら生きていってほしいですね。
03歌と会話が重なる、「ひで」の日常
店内で印象的だったのは、歌が始まると自然に拍手が起こることでした。誰かがマイクを握っているそばで、カウンターやテーブルの会話はそのまま続く。カラオケとおしゃべりが競い合うのではなく、同じ店内で一緒に流れているような時間でした。
お客さんから聞いた言葉
僕がお話を伺った中には、閉店を知って「ひで」へ足を運んだ方もいました。

きょーすけ
お客さんにお話を伺うと、もっと早くからこのお店を知りたかった、という声をたくさん聞きました。ゆっくり落ち着いて過ごせるお店だと話してくださる方もいました。

ヒデさん
そう言っていただけると、本当にうれしいですね。

きょーすけ
僕も、もっと早く伺っていたらと思いました。
半額デーに込めた感謝

きょーすけ
周年には、半額デーを設けていたと伺いました。どんな思いを込めていたんですか?

ヒデさん
周年には、飲み代やカラオケ代などを計算したうえで、お会計を半額にしてきました。お客さんに喜んでいただきたくて。
皆さんに、できるだけ同じように感謝をお返ししたい。自分なりに考えた形なんです。
僕はそれまで、こうした半額デーの話をほかのお店で聞いたことがなく、驚きました。周年をお客さんへのお返しの機会にする計らいに、ヒデさんの感謝の気持ちを感じました。
04お店の節目と、これからのこと

きょーすけ
お店の節目を迎える今、どのようなお気持ちでいらっしゃいますか?

ヒデさん
人生には、山も谷もありました。今回も、自分の人生の一つとして受け止めています。

きょーすけ
お店を終えた後、ご自身はどんなことをしてみたいですか?

ヒデさん
やりたいことがあるんです。何かをしていないと気が済まない性分なので、新しい仕事に挑戦したい気持ちがあります。

きょーすけ
新しい挑戦について、もう少し聞かせていただけますか?

ヒデさん
限られた時間の中で、自分が思うところまでたどり着けるかは分からないですけれど、それでもやってみたいんです。
次の仕事にチャレンジすることには、わくわくする気持ちもあります。
05カズさんの新しいお店
取材では、「ひで」で5年ほど働いてきたスタッフのカズさんが、新しいお店「かずの仔」を始めるというお話も出ました。

きょーすけ
通ってくださっていたお客さんのことは、どんなふうに考えていらっしゃいますか?

ヒデさん
この店を主な行き先にしてくださっていた方が、これからどこへ行くのかは気になります。カズさんが新しい店を始めるので、お客さんにはそちらをご案内しようと思っています。

きょーすけ
一緒に働いてきたカズさんが、ご自身のお店を始めることについてはいかがですか?

ヒデさん
カズさんからは、一緒に働いて学ぶことがあった、と聞いています。
新しいお店は、カズさん自身が考えて、カズさんなりの形をつくっていけばいいと思っています。
06営業後のありがとう

きょーすけ
お店を続けてこられたことについて、改めて思うことを聞かせていただけますか?

ヒデさん
お客さんに来ていただいて、支えていただくことで、私の仕事も暮らしも成り立っているんです。そのことへの感謝があります。
店への挨拶と、一枚ずつの伝票

きょーすけ
一日の営業を終えたときは、どんなお気持ちですか?

ヒデさん
毎日、営業後に電気を消すとき、店の中で「ありがとうございました」と言って帰ります。

きょーすけ
お客さんだけでなく、お店にもお礼を伝えているんですね。

ヒデさん
そうですね。お店があることと、来てくださったお客さん。その両方への感謝です。
家に帰ってからも、伝票を一枚ずつ整理します。その名前を見ながら、「ありがとう、ありがとう、ありがとう」と感謝しています。
営業後にも続く感謝のお話。そして最後に、ヒデさんは一緒にお店を支えてきたスタッフについて話してくださいました。

ヒデさん
良いスタッフに恵まれたと思います。自分一人では、絶対にできなかった。

きょーすけ
お客さんやスタッフの皆さんと、一緒に続けてこられたお店なんですね。今日は、大切なお話を聞かせていただき、ありがとうございました。

ヒデさん
こちらこそ、ありがとうございました。
